- 「一般型」にするか「非営利型」にするかを決める
- 社員や社員に関する規定を決める
- 正会員、賛助会員など、会員制度を考慮する
- 社員の議決権を決める
- 法人の名称を決める
- 事業目的を決める
- 法人の住所(主たる事務所)を決める
- 理事や監事の人数など法人の機関設計をする
- 事業年度(決算期)を決める
- 基金制度について考慮する
- その他、必要事項を決める
非営利型法人の要件
公益社団法人・公益財団法人でなくても、一定の要件を満たせば「非営利型」の一般社団法人・一般財団法人として、公益法人と同様に営利事業のみ課税され、非営利事業については非課税となります。
非営利型法人となるためには、次のいずれかの類型に当てはまる必要があります。
(参考:法人税法施行令第3条)。
類型1 非営利性が徹底されている法人
その行う事業により利益を得ること又はその得た利益を分配することを目的としない法人であって、その事業を運営するための組織が適正であるものとして下記要件すべてに該当するもの
- 定款に、剰余金の分配を行わない旨の定めがあること。
- 定款に、解散したときは、その残余財産が国若しくは地方公共団体又は次に掲げる法人に帰属する旨の定めがあること。
- 1.と2.の定款の定めに反する行為を行うことを決定し、又は行ったことがないこと。
- 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は3親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係のある者(※)である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること。
(つまり、自分以外に、親族等以外の理事が最低2人必要:理事は計3人以上必要)
類型2 共益的活動を目的とする法人
その会員から受け入れる会費により当該会員に共通する利益を図るための事業を行う法人であって、その事業を運営するための組織が適正であるものとして下記要件すべてに該当するもの
- 会員の相互の支援、交流、連絡その他の当該会員に共通する利益を図る活動を行うことをその主たる目的としていること。
- 定款(定款に基づく約款その他これに準ずるものを含む。)に、その会員が会費として負担すべき金銭の額の定め又は当該金銭の額を社員総会若しくは評議員会の決議により定める旨の定めがあること。
- 主たる事業として収益事業を行っていないこと。
- 定款に、特定の個人又は団体に剰余金の分配を受ける権利を与える旨の定めがないこと。
(特定の個人又は団体ではない「社団の会員」は入らないため、会員に対して剰余金の分配をしてもOK)
- 定款に、解散したときは、その残余財産が特定の個人又は団体に帰属する旨の定めがないこと。
- 1.~5.及び7.に掲げる要件のすべてに該当していた期間において、特定の個人または団体に剰余金の分配その他の方法(合併による資産の移転を含む。)により特別の利益を与えることを決定し、又は与えたことがないこと。
- 各理事について、当該理事及び当該理事の配偶者又は3親等以内の親族その他の当該理事と特殊の関係のある者(※)である理事の合計数の理事の総数のうちに占める割合が、3分の1以下であること。
(つまり、自分以外に、親族等以外の理事が最低2人必要:理事は計3人以上必要)
「理事と特殊の関係にある者」は以下のとおり。
(参考:法人税法施行規則第2条の2)
- 当該理事の配偶者
- 当該理事の3親等以内の親族
- 当該理事と婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者
- 当該理事の使用人
- 1.~4.以外の者で当該理事から受ける金銭その他の資産によって生計を維持しているもの
- 3.~5.の者と生計を一にするこれらの者の配偶者又は3親等以内の親族
社員について
一般社団法人において「社員」とは、「従業員」などという意味ではなく、その法人の「構成員」のことで、株式会社でいうところの「株主」に相当する人のことをいいます。
社員は、一般社団法人の最高意思決定機関である「社員総会」(株式会社の「株主総会」に相当)の議決権を持つこととなりますので、社員総会を通じて、法人の運営に関与することとなります。
ちなみに一般社団法人では、社員に対する財産の分配が禁止されておりますので、社員は株式会社の株主配当に相当するものを受けることはできません。
なお、一般社団法人設立には、社員2人以上が必要です。社員は、自然人だけでなく法人も可能です。
社員の資格について
法人の社員になる(社員の資格を得る)ために必要な条件や手続、社員を抜けるための条件や手続き、また社員でなくなる(社員の資格を喪失する)ケースなどを定めます。
(社員になる・社員でなくなるといったことを総称して、「社員の資格の得喪」といいます。)
また、必要に応じて、法人運営に係る経費負担(入会金や会費)などの社員の義務を定款で規定することもできます。
なお、少なくとも社員になることができる条件に関する事項は、必ず定款に明記しなければなりません。
(社員の資格の取得・喪失の両方のケースを定められると良いでしょう。)
社員の資格の喪失に関する法律の規定
法律上では、「社員の資格の喪失」については、次のように規定されています。
また、必要に応じて、法律と異なる定め方を定款で定めることもできます。
- 任意退社
社員は、いつでも好きなときに社員を抜けることができます。
なお、定款において、退社するための方法等を定めることも可能です。
- 法定退社
次のようなケースに至った場合には、社員の資格を失います。
- 全ての社員の同意があったとき
- 個人の場合は死亡したとき、法人の場合は解散したとき
- 除名されたとき
※上記以外のケースを定款に追加して定めることも可能です。
- 除名
何らかの理由があるときは、社員総会の決議をもって、ある社員を除名することができます。
また、定款に除名ができる条件を定めることも可能です。
公益社団法人への対応
公益社団法人に移行する場合には、社員になるための条件に、「不当に差別的な取扱いをする条件その他の不当な条件」を付けてはいけないこととなっております。
定款では、特に理由がない限りは、社員となることができる条件を付けない方が良いでしょう。
一般社団法人では、定款において、社員を「正会員」と呼ぶことと定めることができます。また、その他の種類の会員を設けることもできます。
- 定款の記載例
(会員の構成)
第○条 当法人の会員は、次の3種とし、正会員をもって一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」という。)上の社員とする。
(1) 正会員 当法人の目的に賛同して入会した個人又は団体
(2) 賛助会員 当法人の事業を賛助するために入会した個人又は団体
(3) 名誉会員 当法人に功労のあった者又は学識経験者で総会において推薦された者
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会費制度
一般社団法人において、社員や会員から入会金や会費などの金銭を徴収し、法人運営の経費に充てることとする場合には、定款にその旨を記載する必要があります。
非営利型一般社団法人への対応
設立する一般社団法人が、共益的事業をメインに行う場合で、「非営利型一般社団法人」として認められるためには、社員の会費については社員総会で定めることとすることが求められています。
そのため、定款にその旨を明記しておく必要があります。
- 定款の記載例
(経費等の負担、入会金及び会費)
第○条 正会員は、当法人の目的を達成するため、それに必要な経費を支払う義務を負う。
2 正会員は、総会において別に定める入会金及び会費を納入しなければならない。
3 賛助会員は、総会において別に定める賛助会費を納入しなければならない。
4 すでに納入した入会金、会費その他拠出金は、いかなる事由があっても返還しない。
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公益社団法人への対応
公益社団法人に移行する場合には、社員の会費については社員総会で定めることとすることが求められています。
上記の「非営利型一般社団法人への対応」と同様、定款にその旨を明記しておきます。
一般社団法人における社員の議決権は、原則、各社員1個です。
ただし、定款で別段の定めをすることも可能です。例えば、特定の社員(正会員)だけ議決権を2以上にすることも可能です。
その場合でも、社員総会で決議する事項の全部について議決権を行使することができない旨の定めは、効力を有しません。
(参考:一般法人法第48条)
- 定款の記載例
(議決権)
第○○条 総会における議決権は、正会員1名につき1個とする。ただし、正会員○○○○の議決権は2個とする。
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公益社団法人への対応
- 公益社団法人に移行する場合には、議決権に関して以下のことが要件になります。
- 不当に差別的な取扱をしないこと
- 社員が提供した金銭その他の財産の価額に応じて異なる取扱を行わないこと
(参考:認定法第5条14号ロ(1)・(2))
設立する法人の名前を決めます。
できれば、3つほど考えておくといいでしょう。といいますのも、以下のような制限や注意すべき事があります。
- なお、当事務所では、単なる手続きではなく、コンサルティングもさせて頂きますので、お客様とのヒヤリングの中から、一緒に法人の名称を考えることも可能です。実際に、ご提案した名称にされたお客様もおられ、大変喜ばれました。
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同一所在場所(主たる事務所)で同一の名称は使用できない
- 特にビルのテナントに入る場合などは注意を要します。
- すでに入居しているテナントも十分調査をするといいでしょう。
同一事業でなければ同一名称の使用は可能
- 類似商号規制が廃止されたため、同一事業でも同一又は類似の名称の使用は可能ですが、後に差止請求や損害賠償請求を受けるリスクもあります。(一般法人法第7条)
- 特に、一般に広く認識されている他の会社・法人の商号・名称を使用して混同が生じるような場合は、不正競争防止法で禁止されています。
名称の中に必ず「一般社団法人」を入れる
- 一般社団法人の場合、その名称の中に必ず「一般社団法人」という文字を入れないといけません。(一般法人法第5条第1項)
名称で使用できる文字
- 名称に用いることができる文字は、以下のものに限られます。
- 漢字、ひらがな、カタカナ
- ローマ字(大文字・小文字)
- アラビア数字(0、1、2、3、4、5、6、7、8、9)
- 以下の記号
(※ただし、文字を区切る場合のみ)
- [&]アンパサンド
- [' ]アポストロヒィ
- [, ]コンマ
- [-]ハイフン
- [. ]ピリオド
- [・]中点
参照:【商号にローマ字等を用いることについて|法務省】
類似名称の調査(法務局で)
- 現在、類似名称規制はありませんが、上記のリスク等も考慮して、念のため調査しておく方がいいでしょう。
- 設立する法人の予定住所地の管轄登記所で調べます。
- どの管轄か不明な場合は、下記のページから調べることも可能です。
全国の法務局
◆法務局にある「類似商号調査のための閲覧申請書」を提出して調べることができます。(無料)
◆大きい法務局(出張所でなく地方法務局の本局)だと、備え付けのコンピュータで自由に閲覧できるところもあります。
- 当事務所では、お客様とのヒヤリングの中から、一緒に事業目的を考えさせて頂きます。
- また、事業をする理由や今後のビジョン・展開もヒヤリングもさせて頂き、事業目的の提案もさせて頂きます。
- 特に、一般社団法人の定款には、事業目的の中に、事業の対象は誰か、事業を通じてどんな価値を提供し、どんな社会貢献をするのかといった経営理念、事業価値などを明記しますので、ヒヤリングの中でご提案もさせて頂きます。
これは、知的資産経営の支援で実績ある当事務所ならではの強みでもあります。
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公益認定を受けない場合は、一般社団法人は株式会社と同じく収益事業をしても、会員のための共益事業をしても構わず、特に制限はありません。
しかし、後に公益法人になることを想定している場合は、23種ある公益事業のいずれかを主たる目的としていることが必要で、さらに公益目的事業以外の事業(収益事業)を行う場合は、公益目的事業の実施に支障を及ぼすおそれがないものであること等の認定基準に適合する必要もあります。
やりたい事業内容をとりあえず全て列挙
- 法人は、定款に事業目的として書いてある事業しか行うことができません。
- 現に行う事業だけでなく、将来行うかもしれない事業も含めて、まずはやりたい事業内容をとりあえず全て列挙します。
- 後に変更・追加する場合はその都度、目的変更の登記(登録免許税3万円)が必要になります。
- 事業目的は、「登記事項証明書(法人の登記簿)」に記載されるので、誰でも見ることができます。
- そのため、あまり多すぎると、何をしている会社なのかが分かりにくくなり、信用問題に関わる可能性もあります。
許認可や指定が必要な事業を行う場合
- 許認可や指定が必要な事業を行う場合は、その事業を的確に記載しておく必要あります。
- また、定款の事業目的に、その業種名を入れておかなければ許可が下りない場合もありますので、許認可を受ける官庁に事業目的の記載方法について、必ず相談・確認するようにしましょう。
- 例:訪問介護を行う場合なら、「介護保険法に基づく訪問看護事業」などと記載
※ここに掲げているのは一部ですので、その他にも許認可が必要な事業はございます。
あまり移動しない場所を選ぶ
- 主たる事務所を移転すると、登記の変更手続きが必要でその都度手数料がかかります。
- 管轄内・・・3万円
(例:滋賀県内での移転)
- 管轄外・・・6万円
(例:滋賀県から京都府へ移転)
定款上の主たる事務所の所在地は最小行政区画までの記載でいい
- 例えば「当法人は、主たる事務所を滋賀県大津市に置く」にしておくと、大津市内での移転なら定款変更の手続きをしなくて済みます。
(その場合でも主たる事務所の移転登記は必要です。)
- 番地等は定款認証後に、設立時社員の議決権の過半数で決め、決議書を作成します。
「理事」とは、一般社団法人の業務や事業運営に当たる役員で、株式会社の取締役に相当する人のことをいいます。
一般社団法人には、理事を1名以上置かなければならないこととなっています。
また、理事会を設置する場合には、理事は最低3名以上必要となります。
定款では、必要に応じて、理事の人数の上限・下限などを定めることができます。
また、代表理事(株式会社の代表取締役に相当)を置くか置かないか(理事会を設置しない場合)、代表理事を何人にするかなどについても、定款で定めることができます。
理事会を置く必要はありません。
理事は1名以上で構いません。
(ただし、理事会を置いたときは3名以上必要です。)
監事を置く必要はありません。
(ただし、理事会を置いたときは1名以上必要です。)
理事・監事の任期はそれぞれ2年・4年が原則です。
・理事の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで
・監事の任期は、選任後4年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時社員総会の終結の時まで
が原則ですが、理事の任期は定款又は社員総会の決議で短縮することも可能です。
監事の任期は定款で2年まで短縮することも可能です。
理事会を設置しない場合
理事会を設置しない一般社団法人では、代表理事を置く場合、その代表理事の選定方法として、次のいずれかを採用することができます。
- 理事の互選で選ぶ。
- 社員総会で選ぶ。
- 定款で直接指名する。
この場合、代表理事を変更するには、社員総会で、定款変更手続を行います。
また、代表理事を理事の互選で選ぶこととした場合には、その旨を定款で明記する必要があります。
理事1名以上
理事の人数の範囲を定めることも可能です。
代表理事は任意
代表理事を置かない場合は、理事の全員が一般社団法人を代表します。
代表理事を置くことを定款で定めることも可能。
非営利型一般社団法人への対応
設立する一般社団法人が「非営利型一般社団法人」として認められるためには、理事が3名以上必要となります。
公益社団法人への対応
公益社団法人に移行する場合には、必ず理事会を置かなければなりません。
理事会を設置する場合
理事会を設置する一般社団法人では、代表理事は、理事会の決議によって理事の中から定めなければなりません。
理事3名以上
理事の人数の範囲(必ず3名以上)を定めることも可能です。
代表理事を1名以上
監事1名以上
1年を超えない期間の末日
- 決算期は1年を超えることはできませんが、1年以内であればいつでもよく、特に理由がなければ年1回にしておきます。
- 例:2月設立なら、決算期を翌年1月31日にする(※登記申請日が設立日)
- 決算期が2月の時は注意 ⇒ うるう年があるので2月末日にする
法人設立月の直前の月を決算期に(一例)
- 初年度の決算手続きを遅く出来ます。
- 例えば、2月に設立して3月を決算法人にすると、すぐ決算申告しなければならなくなります。
- 例:3月設立で3月決算
⇒ 設立したその月に第1期の決算しないといけない羽目に
決算事務を決算期後2ヶ月以内にしなければならない
- 法人税の確定申告を2ヶ月以内にしなければなりません。
- 決算期後3ヶ月以内に社員総会で決算報告をします。
- 10月31日決算だと、繁忙期の12月に決算事務をしなければならなくなるので注意が必要です。
一般社団法人は、株式会社設立の際の出資のように、設立に際して財産の拠出を必要とはされていません。
しかし、活動の原資となる資金調達の手段の一つとして、「基金制度」というものがあります。
ただし、株式会社における出資と違い、「基金」は、その拠出者に対して、法律及び法人と拠出者との間の合意に従い、返還義務があります。
また、基金の拠出者は、一般社団法人の「社員」とは結び付かず、拠出者が議決権を持つわけではありません。この点についても「株式会社における出資者」=「株主」という関係とは異なります。
勿論、「社員」が基金の拠出者となることも可能で、反対に「社員」が基金の拠出者にならないことも可能です。
もっとも、基金制度の採用は任意ですが、採用する場合は定款で定める必要があります。
また、集めた基金をどのように使うかについても制限はなく、活動の原資として自由に使うことが可能です。
なお、基金制度を採用した場合、廃止することはできません。
- 定款の記載例
第○章 基金
(基金の拠出)
第○○条 当法人は、会員又は第三者に対し、基金の拠出を求めることができるものとする。
(基金の募集等)
第40条 基金の募集、割当て及び払込み等の手続については、理事会が別に定める基金取扱い規程によるものとする。
(基金の拠出者の権利)
第41条 基金の拠出者は、前条の基金取扱い規程で定める日までその返還を請求することができない。
(基金の返還の手続き)
第42条 基金の返還は、定時総会の決議に基づき、一般法人法第141条第2項に定める範囲内で行うものとする。
(代替基金の積立て)
第43条 基金の返還を行うため、返還する基金に相当する金額を代替基金として計上するものとし、これを取り崩すことはできない。
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